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カロラに合わせて俺は馬鹿正直に名乗った。
「俺はザード・ザックス・クリムゾンだ。カロラ叔父さん、よろしくお願いします」
カロラは頬を軽く掻いていた。
「〈シェイクスピア〉という居酒屋がある。そこのママがこの街一番と言っても過言でないぐらい裕福に金をばら撒いている。アサバ街ではアル中が常識でね。BAR経営者が豊かに暮らしている訳だ。ソレントバス革命が起こってから、王族は朽ち果て、皆、酒のため必死に働いている」
俺の中で人間界の夢が粉々に砕けるのが分かった。
「あ、あの…俺、やっぱ母さんが心配になって来た」
逃げ出す姿勢の俺をカロラは縄で俺の手首を縛った。家畜の世話で慣れている様子だった。
「タダで馬車に乗られてばかりでは、馬が死んでしまう。走れ!チェルシー」
俺はもがいた。また芝生に転がされて辛うじて馬糞を避ける。
「叔父さん、俺を〈シェイクスピア〉のオーナーに売るのか?カロラ!俺が何をしたって言うんだ」
カロラはもはや俺を売り物と決め付けたようだ。返事も罪悪感さえも読み取れない。
俺は〈シェイクスピア〉のママが優しいことを期待して、状況に甘んじた。これは父さんの血だ。
だから父さんは人間に殺された。
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