8人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ、ここで晩飯にしようかな。」
別に帰った所で誰もいない。
そんな考えで俺はてんとう虫の中に潜り込む。
外はこんなにひどい雨だというのに
中は少しだけ暖かかった。
中のベンチに座り、膝に弁当を開く。
大人でももう数人は入れそうな広さも
子供の頃はもっともっと大きな秘密基地に感じたものだ。
さて、何から食おうかな。
幕の内弁当の色とりどりのおかずに
行儀が悪いと知りながら迷い箸。
シャケの切り身から、と決めた俺の耳には
チャプリ、ザリっと聞こえた足音。
こんな雨の日に公園に何の用があると言うのか
音のする方へと顔を向けると
「……ひっ、ひぐ。」
とすすり泣くような声がする。
その声はだんだんと近づいてきて
てんとう虫の入り口から顔を出した。
「……っぐ、ぇう。」
その子の顔は雨に、涙に鼻水にと
色々なものでぐちゃぐちゃで
見られたようなものではなかった。
最初のコメントを投稿しよう!