のら猫の飼い方。

１日目。里親挨拶に行きましょう。

スキンヘッドの男が俺の肩を掴む。
逃がさないように、力を込められたそれは少しだけ痛い。
彼の目は俺をしっかりと見据えていて
その低い声は脅すように俺に言う。

「お前は、ノラをどうしたい」

どう、と言われて答えに詰まる。
そしてなんと答えればいいのかが分からない。
キレイ事で嘘を言っても見透かされそうなその目に
恐怖を感じながら答えを探す。

「答えろ。じゃなきゃ金持って帰れ。」

脅すような声色が追い打ちをかけて
俺の頭のなかから答えをかき消す。

俺はどうしたいのだろうか
付き合いたいとか
いやらしいことをしたいわけでもない。

何もしたくないと答えるわけにはいかず。
幸せにしたい、と言えば結婚でもするような言い方だし
直近でしたいことと言えば。

「着せ替え人形、ですかね」

「あ？」

「いろんな服を着せたいです」

ぽかんと開くスキンヘッドの男の口。
きっと俺が何を言っているのか分かっていないんだろう。
自分でも何を言っているのか分かっていない。