夏休みの出会い

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   大地がずしんと震えた。思わずたたらを踏んで、真っ黒な雲を見上げる。  目指す山に、稲妻が突き刺さった。 「ありゃ~落ちたな」  担いだ虫捕り網を揺すりながら、わくわくと走り出す。龍神山には、珍しい虫がいると聞いたのだ。  いつもは近寄りがたいお山も、今日は宝の山に見えた。  さっそく近くの大木に駆け寄って、うろを覗きこんだ。 「何してんだ?」 「うわぁっ」  いきなり背後から声をかけられ、飛び上がって振り向く。  見知らぬ男の子が立っていた。 「おっどろいたぁ……お前誰だ?」 「ちょっと下りて来たんだ。なぁ、一緒に遊ばないか?」 「いいぞ。遊ぼうぜっ」  長い夏の日が暮れるまで、いっぱい遊び回った。  空が茜に染まる頃、また遠くで遠雷が鳴るのが聞こえた。 「あっ……父ちゃんが迎えに来る」 「帰るのか? また遊ぼうなっ」 「うん。ばいばい」  あいつは顔中で笑いながら手を振って、山を登って行った。 「あんた、何言ってんの。あの山は神さんの物だから、住んでる人なんかいないよ」  母ちゃんに頭をひっぱたかれて、首を傾げる。  はて……じゃあ、あいつは誰だったんだ?  それはある夏の思い出。  
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