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青い空に様々な形をした雲が、風に乗って通り過ぎて行く。
「にゃはぁ……お空の池にお魚がいっぱいにゃぁ……」
のんびりと黒い毛を風に吹かれながら、だらーんと寝そべって空を眺める。
「あ。あれはコイさんで、あっちはフナさんかにゃ」
流れる雲をさして嬉しそうに目を細め、ごろごろと喉を鳴らす。
「今度はサンマちゃん! おいしそうにゃあー」
思わず垂らしたよだれを手で拭うと、腹の虫がぐきゅるるると盛大に鳴いた。
「腹減ったにゃぁ……ご飯食べに行こうかにゃ」
のっそりと立ち上がったその時。屋上の扉が乱暴に開けられて、人間が飛び込んで来た。
「居た。先輩、猫になりきるのはいいですけどね、部活放置しないでくださいよ」
猫から人間に戻った先輩は、後輩の肩を抱いて歩き出す。
そして情けなさそうに一言呟いた。
「腹減ったぁ……なんか喰わせて……」
「はいはい。部室に菓子とパンがありますよ」
「サンマちゃんが喰いたいなぁ」
「無理です!!」
後輩の呆れたような楽しげな声が、青空に高く響いた。
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