お空の池

2/2
前へ
/36ページ
次へ
   青い空に様々な形をした雲が、風に乗って通り過ぎて行く。 「にゃはぁ……お空の池にお魚がいっぱいにゃぁ……」  のんびりと黒い毛を風に吹かれながら、だらーんと寝そべって空を眺める。 「あ。あれはコイさんで、あっちはフナさんかにゃ」  流れる雲をさして嬉しそうに目を細め、ごろごろと喉を鳴らす。 「今度はサンマちゃん! おいしそうにゃあー」  思わず垂らしたよだれを手で拭うと、腹の虫がぐきゅるるると盛大に鳴いた。 「腹減ったにゃぁ……ご飯食べに行こうかにゃ」  のっそりと立ち上がったその時。屋上の扉が乱暴に開けられて、人間が飛び込んで来た。 「居た。先輩、猫になりきるのはいいですけどね、部活放置しないでくださいよ」  猫から人間に戻った先輩は、後輩の肩を抱いて歩き出す。  そして情けなさそうに一言呟いた。 「腹減ったぁ……なんか喰わせて……」 「はいはい。部室に菓子とパンがありますよ」 「サンマちゃんが喰いたいなぁ」 「無理です!!」  後輩の呆れたような楽しげな声が、青空に高く響いた。  
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加