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重く軋む扉を押し開けると、むせ返るほど熱い空気が押し寄せて来た。
思わず顔をしかめながら、屋上へ一歩踏み出す。
灼熱の日差しに焼かれた、コンクリートからはゆらゆらと、陽炎が立ち上ぼっている。
際まで歩いて行くと、金網越しに地上を見下ろし、ぺたりと座りこむ。
尻と太ももの肉が、焦げそうな気がした。
ビルの屋上はどこも代わり映えがしないのに、ここにはなぜかカラスが多い。
「お前達は気楽でいいね」
暑さを物ともせず、コンクリートの隙間をつつくカラスに、なんとも言えないため息を吐く。
「疲れちゃったな」
金網の破れ目から足を投げ出し、ぶらつかせてみた。
空から吹き下ろすように、意外と優しい涼風が、足を撫でて行く。
「もう、終わりにしちゃおうか……」
真っ黒な瞳がこちらを見ていた。
一羽のカラスは目が合うと、思案するように首を傾げ……
「ガアッッ」
一声高らかに鳴いた。
そのどうでもよさそうな声に、思わず笑みが零れる。
「しょうがない。もう少し生きてみるか……」
空は霞んでどこまでも高く、ビルの屋上は馬鹿みたいに暑い。
そんな夏の午後。
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