3話「早すぎる『さようなら』」

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 エルクはこちらを向いて、俺の姿を確認する。 「ええ、名前はアリューシャよ。」  サレニアの言葉を聞きながらエルクは俺を抱えあげた。  近くで見ると思っていたよりもガッシリとしている。 「アリューシャ・・・アリス、か。良い名だ。」  フィーと同じ様に短く挨拶する。 「ハハハッ、なんだもう喋れるのか!」  エルクに高く持ち上げられた。  抗議の声を上げるが、喜んでいると思われているようだ。  下ろしてくれる気配は無い。 「おとーさん、こわいっていってるよ?」  フィーがエルクのズボンの裾を掴んで止めてくれる。 「お?そうかそうか、すまないな。」  エルクはそっとベッドに俺を戻し、代わりにフィーを抱き上げた。 「ただいま、フィー。」 「おかえり、おとーさん。」  俺は仲睦まじい家庭に生まれたようだった。
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