epi.2 洗濯日和

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チハルは無言で空になったカップを取り、洗い始めた。そのままそっとマミーの様子を観察する。 突然ティーチャーから過去を告白された、彼女を。 〈砂漠の果て(デザーツ・エンド)〉に住んでいる者は皆、安易に自分の過去や秘密を口にしない。律が存在しないこの街では、何がきっかけとなって事件が起こるかわからないからだ。 しかし、初対面でありながら、自分の警戒心と緊張感をあっさりと取り除き、秘密を語らせた彼女の空気は、この街では類を見ない不思議なものだった。 それを自覚しているのか、していないのか。マミーはゆっくりと唇を開いた。 「あなたは優しいんですね。その優しさは……きっとガールにも伝わっていますよ」 その言葉に、ティーチャーが力なく笑った。チハルも口元をわずかに歪める。 彼は『優しい』とみんなに言われていたし、実際にチハルも言ったのだ。 ――――あんたは優しい、優しすぎるよ。もはや愚かに見えるくらい ――――いつになったら解放されるんだ?あんたを縛る、ありとあらゆる柵から…… 同じように思い出したのだろう。振り払うようにティーチャーがカタン、とカウンター席から下りた。 「……もう、行かなくては。じきにガールが目を覚まします。そばに……いてやらないと」
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