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――――本当にこればっかりは何度だってため息をつきたい
どうして、そしていつの間にこんな役になってしまったのだろう。
来る日も来る日もカフェとホテルでまめに働いている自分でなくてもいいじゃないか。
そう内心毒づいているチハルの前には二〇一号室のドアがそびえ立っていて、中から甲高い叫び声や怒鳴り声や何かが壊れる音などがもはや筒抜けで聞こえていた。
「ったくもう、入るぞ!」
申し訳程度にノックをして乱暴にドアを開けると、耳をふさぎたくなるような騒ぎが繰り広げられていた。――――主にうるさくしているのはガールなのだけれど。
「ガール、落ち着いてくれ!」
ティーチャーの叫びもむなしく、彼女は泣きわめいていて全く聞いていないようだった。
壁に張り付いているティーチャーに向けて、手当たり次第にものを投げつけている。もし直撃すればかすり傷では済まされないようなものまで投げているので、ぐちゃぐちゃの精神状態のおかげで的外れな方向に飛んでいるのは救いだった。
「愛していないならハッキリ言えばいいのよ!ただの迷惑なガキだって言ったらどうなの!ちゃんと教えてよ、先生!」
悲鳴のような声にチハルはほんの少し笑った。
ティーチャーを飛来物からかばいながら、ゆっくりとガールへと歩み寄る。
いつだって彼女のヒステリーは同じ理由で、解決方法も同じなのだ。
ただ今のガールはそれを受け付けない。第三者が――――つまりチハルがお膳立てしてやらなければ。
だからチハルはそっと声をかけた。
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