epi.2 洗濯日和

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「ガール」 ティーチャーではない声を認識した瞬間、彼女はびくっとして喚くのをやめた。 しゃくり上げながらも、涙に濡れた瞳が焦点を結んでいく。 チハルはそれを見て取り、再び呼びかけた。 「ガール。オレが、わかるか?」 彼女の瞳が、チハルを捉える。か細い声が喉を震わせてこぼれ落ちる。 「チ……ハル……」 「そうだ。落ち着いたか?」 ガールは脱力してへたり込んでしまった。 チハルは彼女の前に膝をつき、大丈夫と判断したところでティーチャーに目配せをした。 そして散らかり放題の部屋から食器の発掘を始めた。 ちらりと振り返ると、ティーチャーがガールの体を抱き寄せて、諭すように囁いているところだった。 「君は僕の大切な女の子だよ。何度も言っただろう?」 「本当に……?」 「もちろん――――愛しているよ、ガール」 なんとか二人分の食器を集め、チハルは二〇一号室を後にした。 これからガールの心が完全に凪ぐまで、ティーチャーは彼女に愛の言葉を囁き続けなければならない。いつも通りだ。彼女がヒステリーを起こすたびに、ずっとそうしてきた。 そうやってティーチャーは嘘を嘘で塗り固めていくのだ。 ガールはそれを知っていても、認めたら自分が崩れてしまうと分かっているから、その嘘にすがって生きていく。 捻じ曲がった愛と、歪んだ優しさが渦巻いて泥沼のようだ。 チハルは吐き気がして、それを振り払おうと深くため息をついた。
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