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「ガールは……教え子だったんですか?」
教師と生徒間の恋愛は、どの《街》においても絶対の禁忌。
さすがに彼女も知っているのだろう。囁くようなマミーの問いかけにティーチャーは静かに首を振った。
そしてゆっくりと――――自分にも言い聞かせるように答えた。
「あの子は『今でも』教え子です。僕にとってはそれ以上でもそれ以下でもありません」
とても愛おしいですけれどね、と小さく付け加えられる。
けれど、それは「恋愛対象ではない」と断言したも同じだった。
ガールとティーチャーの感情の食い違いに、マミーは表情を曇らせる。
一方チハルは、珍しく饒舌なティーチャーの姿に驚いていた。
〈砂漠の果て〉に流れ着いた理由が理由なので、普段の彼はほとんど事情を語らないのだ。
それが今の彼は、まるで懺悔をするかのように、ゆっくりとだが話し続けている。
マミーに、というよりも――――過去を振り返って整理するように。
彼らが3年前に〈ホテル・エデン〉にやってきたきっかけとなる出来事を。
「それでも……一度抱いてしまえば同じことなんでしょうね、お偉いさん方にとっては。街から放り出すには十分すぎる理由です。僕もガールも身寄りはありませんでしたし」
チハルから受け取ったコーヒーを一口飲み、ティーチャーは短く息をついた。
そして、未だ絡んでいる糸をほどくように、ぽつりぽつりと話し始めた。
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