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第1章 うりぼーVSおっさん
「ふんふふーん♪」
茜色の空の下、線路の横に中年男性が一人。
鼻歌交じりに彼は石を拾っている。
時は夕刻。カラスが鳴き、風に揺れるススキが笑う。
あたりは民家一つないただの荒れ地。
そして眼下には日本海が広がる、そんな場所で何故彼は石を集めているのか。
彼は石の形を気にしている様子はなく、ストーンコレクターではない様だ。
さらに謎が深まるばかりである
少しするとおもむろに立ち上がり、手さげバックに石を詰め、線路にそって歩いてゆく。
しかし似あっていない。
なんたってこのバック、赤い花のアップリケとピンク色の布地をしており明らかに中年男性が持つようなものではない。しかもスーツを着ているのだから更にミスマッチである。
そんな可愛らしい手さげバックを肩に下げ、鼻歌を歌いながら枕木の上を革靴でぎこちなくスキップをする、その恐ろしく似合わないその姿は都会ならば明らかに職質モノであろう。
「ふんふふーん♪」ッガッガッガ(革靴が枕木に激しくぶつかる音)
「ふんふf」ッガス!(枕木に足ひっかけて転倒)
「っあ…!ギャアアアアア!!!イダイいいい!!!」(コケてひたいに石が刺さる)
卵割り機回のマスオさんかお前は。
中年男性が額から血を流し唸る。
少しして落ち着いてきた男性はうつ伏せのまま手探りで袋を探す。
ガシィ…!
これがすべての間違いだった。
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