ちょび髭危機一髪

　「夜の学校は怖いので楽しい事を考えましょう。一人ずつ順番に楽しい事を言うんです」光さんは皆の前に立って魔除けのおまじないを提案した。これ結構効き目あるんだよなぁ。

灯女さん→咲夜さん→詠葉さん→光さん→楓さん→僕の順に楽しい事を繋げていく。

「獅子舞乱入」するのはお正月だよ。でも楽しそうだ。

「サンタ乱入」あと二ヶ月先の話になりそうだけど。楽しいなぁ。

「ゾンビ乱入」怖いわ！　て言うか乱入以外にはないのかな。

「イチゴ柄の」光さんは暫く間を空けて「ぱん……」少し区切って「――屋さん」間の空け方が巧いよね。

「女だてらにチェリーを食す会でイモリスープ争奪戦」勝ったらイモリスープ飲まなきゃならないし、さくらんぼはどこへ行ったんだ？

「無茶する本野センコーのケツアゴ日誌“VS空き教室のペロリスト軍団”」これでどうだ！

「はっはっは。皆発想が逞しいの。儂も幾つか。ＳとＭの悪夢でちょび髭危機一髪！階段の弾痕と団塊の会談始まる。どうじゃ」学生と話す機会が少ないからよく喋る夜警さんだな。

　「オトナなネタだけど、まぁまぁかな」

　「詰まらんか。ほいじゃあ蛇口からポンジュース」

　それ素直に嬉しいな珈琲とか紅茶とかスポーツ飲料も出る設定だともっと嬉しいけど。

　「そう言えば夜警さんの知ってる七不思議ってなんなんですか？」

　「人伝に聞いた話なんじゃがの。昔、この学校に…差し詰めＳと言う男が住み込みで働いとったそうな。彼はＭゆう黒い猫を可愛がっとったらしい」

　Ｓさんと…、黒猫のＭ…。まさかその設定って先程の魔除けのじゃあ。

　「ある夕方。生徒の一人が発狂して暴れ始めた。Ｓは生徒らを避難させてその犯人に立ち向かったが返り討ちに遭うたんよ。酷い傷を負って死にかけたその時、最後の一撃を猫のＭが庇ってなくなった……」

　夜警さんは少し寂しそうな笑みを浮かべた。