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SとMの悪夢でちょび髭危機一髪ってこの事だったのか……。と言うか絶体絶命も通り越してるよ。
「丁度、この廊下を付き合った所にある階段じゃったかな。犯人が凶器で傷つけた階があるらしいんじゃが学校が改修工事をした」
夜警さんは前方に指を指した。
「彼処に?」
「酷い事件じゃった。Mを可愛がる生徒もおって、Mが傷付いた事に怒り犯人に立ち向かったんじゃが……」
夜警さんは口惜しげに首をふるふると横に振る。
「残念…。でした…。ね……」
言葉が出ない。七不思議にそんな悲しい過去があったなんて。
「今もSはMに懺悔したいと猫を探し回って校舎を彷徨いとる……と言うのが儂の話。ネタにならんかったら申し訳ない」
思ったんだけど、夜警さんは学校の七不思議にやけに詳し過ぎるし、まるで自分が体験したかのような口ぶりだ、僕達の事も知っているし。出逢った時から思っていたけどこの人だけ懐中電灯を持っていない。と言う事は、夜警さんが本野さん本人?
でも七不思議の順番的に変だ。Mがこの場に現れていないから本野さんではないのかも。
「何か話とったらモヤモヤしたものがスッキリしたよ。君らを探し続けちょった甲斐があった」夜警さんは僕達の方を見るとにっこりと笑った。
「儂もそろそろ仕事あがるかの」
「待って下さい。あの“僕達を探し続けてた”ってどういうことです?」
「いやの。校舎に現れる猫を探しとったんよ。君らなら探せると思っての。そしたらほら、こんな近くに」
夜警さんはしゃがみ込んで両手を差し出すと「おいで。ムーや、おっちゃんはここにおるで」と何かを呼ぶ。
すると僕達の後ろから小さな黒い影がにゃあと鳴きながら、夜警さんの方に駆けて行く。
夜警さん。この人はやっぱり――
「本野さん!」
廊下に隣接する教室から女性の呼ぶ声がして、ゾロゾロと此方にやってくる。
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