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見知らぬ世界に少女……美鈴は戸惑った。
半身を起こし、目の前にいる美しい金髪の青年、ジルに聞きかける。
「あの、ここは?」
「…魔物の森」
「魔物の森…?」
日本語でも伝わるか心配だったが、どうやら問題ない様だ。
美鈴はぼんやりと記憶を辿る、あの階段から飛び降りたところまでは覚えていた。
だがそこから先がわからない、そもそもどうしてあんなことをしたのか忘れてしまっていた。
「君…怪我は?」
「大丈夫です…どこも痛くありません」
あの高さから落ちて、美鈴は無傷だった。
不思議となんの痛みも無く、ピンピンしている。
肉体は無事だった、それとは引き換えに何か大切なものを失ったような喪失感に美鈴は呆然としていた。
「君、名前は?」
「え…」
美鈴は名前を聞かれて戸惑った。
覚えてないのだ。
覚えているのはあの七不思議と、階段から飛び降り瞬間の記憶だけ。
あれは誰から聞いた七不思議だったか、自分の名前が何なのか全て美鈴は忘れてしまっていたのだ。
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