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「わかりません…覚えてないんです…」
「そうか…」
ジルは考える、打ち所が悪かったのだろう記憶喪失かもしれないと思った。
「本当にわからないのか?何か他に覚えていることは?」
「七不思議…七不思議を誰かに聞いたんです、校門の前にある長い階段、そこから飛び降りれば別の世界に行けるって…それで私、試してみたんです、本当に行けるかどうか…
でもその七不思議を誰から聞いたのかがわからない…覚えてるのはその七不思議と、飛び降りた瞬間に見えた景色だけ…」
美鈴は自分の名前だけじゃなく、幼なじみである翔のことも忘れていた。
ジルは考える、目の前にいる少女の話を聞く限りこの国の住人ではないらしい。
こことは別の世界から来たのだと理解した。
そして自分のことすら覚えていないのに何故か七不思議のことだけはハッキリと記憶に残っていた。
その事を不思議に思ったジルは小さく震える美鈴の手を無意識に握っていた。
自分より2回りも小さな手はひんやりとしていて冷たい。
「あの…」
美鈴は不思議そうにジルを見つめた。
いつの間にか震えが止まっていることに美鈴は気付いていない。
「君はただの記憶喪失では無い様だ、俺はそれが何なのか知りたいギルドに来て、マスターに会ってみないか? あの人なら何かわかるかもしれない」
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