プロローグ

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それは彼女が高校生になって初めての冬のこと。 放課後、まだ何人か人が残る教室で友達と話すこともなく、ただ本を読む女子生徒がいた。 背中まで伸びた黒髪に同じように黒く濡れた大きな瞳、黒いセーラー服の袖口には白いラインが2本入っていて、スカートは膝が隠れる程長く控えめな胸元には赤いスカーフが映えていた。飾り気が無く、清楚な雰囲気をした彼女は窓際の一番後ろの席に座って姿勢正しく、一定のリズムでページを捲っている。 その1つ1つの仕草が美しかった。 彼女は萩村美鈴(はぎむら みすず) 礼儀正しく成績優秀で天使のような容姿と優しい性格で教師からもクラスメイトからも信頼されている模範生徒だ。 欠点があるとしたら絵を描いたように運動音痴な事と、お人好しすぎる所だろう。 彼女は、人の為に何かをする事を生き甲斐に感じていた。 「ねぇ、萩村さん ちょっといい?」 「…?」 頭上から甲高い声がして、本を読んでいた美鈴は顔を上げた。 美鈴の前には薄茶色の髪を巻いてスカートを短くしたセーラー服の上にクリーム色のガーディガンを羽織ったギャルめいた風貌の女子生徒、日下リナ(くさか りな)が、彼女を見下ろしている。
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