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美鈴は本にしおりを挟んで閉じると優しい笑顔で
「どうかした?」
と、首を傾げた。
「うちこれから用事あってさ~ 代わりに日誌書いてほしいんだぁ ダメ?」
リナは甘えた声で言う。チェック柄のピンクのマフラーに隠れて見えながったかその唇は弧を描いていたに違いない。
リナは遅刻、サボりの常習犯で事あるごとに美鈴に仕事を押し付けていた。
しかし美鈴は嫌な顔をせず、ただただ天使の微笑みを称える。
「わかった、代わりにやっておくね」
「ありがとー!萩村さん優し~い~」
そう言うとリナは美鈴に日誌を押し付け、さっさとスクールカバンを持って教室を出て行った。
それを遠目で見ていた男子生徒、柳沢翔(やなぎざわ しょう)が機嫌悪そうに美鈴に言う。色素の薄い髪に美しい焦茶色の瞳、モデル顔負けのイケメンだった。
「お前ちょっとは断るとかしろよ」
「用事があるって言ってたでしょ」
早速日誌を書きながら美鈴は言った。
それに対し、翔は眉間にシワを寄せる。
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