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美鈴達の通う学校は高台にあり、校門を出てすぐの所に階段があった。
手すりも無く、斜面も急だがこの階段を渡らないと家には帰れないのだ。
その階段には、とある噂があった。
「七不思議?」
階段の前で美鈴が首を傾げた。
翔は得意気な顔で言う。
「この階段から思い切りジャンプするとさ、稀に別の世界に行くことが出来るんだと」
「別の世界って?」
「知らね、行ってみればわかるんじゃね?」
翔は頭の後ろで手を組んで、言った。
それから少し間を置いて「俺たちも試してみねぇ?」 と冗談混じりに言う。
「そんな、危ないよ」
「大丈夫だって、こんだけ雪積もってんだしクッションになるだろ 」
美鈴達のいる地域では今年一番の大雪が降り、踏み外してしまえば膝が埋まる程の高さまで積もっていた。
それでも美鈴は悩んでいた。
「でも、仮に行けたとして帰れるのかな?」
「この噂が流れてるってことは、誰かが別の世界に行ってきたことがあるんじゃね? 火の無いとこに煙は立たないからさ」
翔は 一回試してダメだったら帰ると言う条件で美鈴を誘った。
美鈴はやっぱり少し迷ったが、一回やって無理だったらすぐ帰ると言う条件でぎこちなく頷いた。
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