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「・・・お前にストーカー?」
俺が教室でオニギリを口に加えていたとき、とある一人の人間の相談を受けていた。
「そう、最近一人で歩いて帰っていると変な足音が聞こえるの。振り返って見ると誰もいないんだけどね」
彼女はそう言って『不安そう』な素振りを見せる。
「自意識過剰なだけじゃないの?」
この言葉をきっかけに彼女の機嫌が悪くなっていくのがわかった。
「何度も被害にあっているから相談しているの!
ちょっとは心配してよ!この役立たず!」
「・・・はあ」
役立たずこと木伏 林道(きぶし りんどう)は何度目であるか分からないほどの溜め息をまた一つついていた。
目の前にいる彼女 吉野 さくら(よしの さくら)とは切っても切れない腐れ縁の仲である。
俺と彼女は親の近所付き合いと『ある共通点』を持っていたため、小学校の頃から何となく一緒にいるのだ。
高校になれば離れるだろうと思っていたが、クラスまで一緒になる始末だった。
「しかし、お前に男か。なんだか置いて行かれたようで寂しくなるな。こんないまだに成長の兆しも見せないまな板女にも大人になる時が・・・」
教室内で思いっきり大きな音が響いた。パーで頬を殴られたのだ。
「・・・死にたいの?」
「冗談です!」
低い声で殺意以外の感情が存在しないような表情。
汚物どころか、害虫を駆除する目で俺を睨む。
衝撃的な痛みを感じる左頬を手で押さえ、とりあえず機嫌をなおすためにおだてる言葉を考える。
「そ、それはともかく、お前にストーカーか。確かにお前はかわいいもんな」
顔だけは、顔だけはな。大事なことなので二回心の中で呟いてみた。
今度は鈍い音が聞こえた。
また殴られた。今後は顔面にグー。
(な、何?遂にこいつはテレパシー能力を手に入れたのか?心のなかを読めるようになったのか?)
「な、何いきなり、へ、変なことを言うのよ!このバカ!」
どうやら違ったらしく、慣れない言葉に顔を赤くして照れていただけだった。
(・・・ちょっと待て!何で今俺殴られなくちゃいけないんだ?
貶しても褒めても殴られるとか理不尽ではないですかね!)
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