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呆れて困った表情の神住に、ドキンと胸が凍り付く。
言うべきじゃなかったと後悔した瞬間、そのまま腕を引かれて近くにあった公園まで連れて行かれた。
人目を避けれる植木の影に追いやられると、グッと距離を縮められた。
「神住君?」
困惑しながら神住を見上げると、切ない眼差しとぶつかった。
怒らせているのに、キュッと胸が甘い悲鳴を上げる。
「そんなこと言うお前が悪いんだからな」
神住はそう呟くと、その整った薄い唇を蛍の唇に重ねた。
やわらかくてしっとりとした唇に、驚きも忘れて頭の芯がとろけてしまう。
暫くついばむようなキスをされた後、今度は優しく何回も唇を吸われた。
ケイの時とは比べ物にならないほど濃厚なキスに、息が上がってだんだんと頭がボーッとしてくる。
神住の胸元のシャツを握り締めた手だけが、固くふるふると震えていた。
「口、開けて」
狼のように鋭く真剣な瞳が蛍を捉え、神住がそっと囁く。
その瞳に逆らうことが出来ず、蛍はゆっくりと口を開いた。
するり、と柔らかいものが口の中に滑り込んできた。
驚きに思わず唇を離そうとしたが、体をグッと拘束される。
優しく、それでいて激しいキスに、頭がおかしくなりそうだった。
「神住君、もう……」
唇が少し離れた合間を見計らって、蛍はようやくギブアップと言わんばかりに顔をそらした。息が上がり、体がわなわなと震えている。
そしてホッと息をついた瞬間、膝の力がガクッと抜けた。
「大丈夫?」
咄嗟に神住が蛍の体を支える。
まだ火照る顔で彼を見上げると、少しだけ罰の悪そうな神住の瞳と目があった。
「大丈夫です、ごめんなさい……!」
「悪い、ここまでするつもりじゃなかったけど、止まらなかった……」
赤くなる頬を手の甲で隠しながら、神住がフイとそっぽを向く。
初めて見る神住の表情に、先程のキスの衝撃も忘れて呆気にとられてしまった。
そんな蛍の様子にむくれながら、神住は言った。
「こうなるから避けてたんだよ」
「こうなる……?」
「お前の事大事にしようって思ってたから。触れたりキスしたりすれば、自制が効かないのわかってたし。そもそも、あの時だって俺はケイの向こうにいるお前しか見てなかったよ」
蛍の頬がボッと真っ赤になる。
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