第1章 予期せぬ宝物

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1  髭を生やした男が、ボイルドエッグを食べている。 不作法な、その手慣れた食べ方は、何故か、美しかった。 手の平で軽く押し付けながら、皿の上で前後に転がす。 すると、お約束どおりに、中心にぐるりと亀裂が走る。 そして、おもむろに持ち上げると、長い爪で器用に殻をむく。 ツルリとした、それでいて弾力のある、光を帯びた物体が顔を出す。 男はその顔にキスをすると、舌の先で愛撫をし、歯を立て、実に美味そうに頬張る。 その姿に、僕は、なぜかジェラシーを感じた。
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