2人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
1
髭を生やした男が、ボイルドエッグを食べている。
不作法な、その手慣れた食べ方は、何故か、美しかった。
手の平で軽く押し付けながら、皿の上で前後に転がす。
すると、お約束どおりに、中心にぐるりと亀裂が走る。
そして、おもむろに持ち上げると、長い爪で器用に殻をむく。
ツルリとした、それでいて弾力のある、光を帯びた物体が顔を出す。
男はその顔にキスをすると、舌の先で愛撫をし、歯を立て、実に美味そうに頬張る。
その姿に、僕は、なぜかジェラシーを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!