第1章 予期せぬ宝物

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 ふと、気が付くと、時計の針が9時50分を指していた。 「マズイ、今日は外せない約束があった」 日曜日だというのに、朝から人と会わなければならない。 約束は10時半だった。 僕は、そそくさと、レジでサインをしてレストランから出ると、フロントへ向かった。 「すみません。福永ですが・・・」 フロント係りの男は、眼鏡の隙間から上目使いで、ニヤリとこちらを見た。 「福永祐太様ですね?」 「はい。出掛けたいのですが・・・」 「あの・・・お連れ様はどうなさいました?」 「それが・・・先に出た様で・・・」 「やっぱり、そうでしたか。今朝早く、お連れ様に似た女性が出掛けられるのを見ましたもので・・・」 「ええ。それで、伝言を頼みたいのですが・・・」 「はい。それでは、メッセージをどうぞ」 「えーと。圏外で携帯電話が、使えないかもしれないですが、夕方5時には戻ります。 と、お願いします」 「はい。かしこまりました。 それでは、御予定通りに、もう一泊でよろしいですね」 「ええ。それでお願いします」 「はい。かしこまりました。 行ってらっしゃいませ」
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