ボクはこれからどうなるのか。

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 ボクはまたベッドの上に寝転ぶ。  窓が開いているから、誰かが歩いていることがわかった。  淡々とした歩幅の広い足音。  それもスニーカーだ。  そして、うちの玄関のベルが鳴った。  すぐに奥から母が出てきて訪問者と対応している。  俊だ、とわかった。  なんだかボクは、この機会を逃したくなくて、部屋のドアを思い切り開けた。  けど、そこから出ていく勇気はまだない。  俊、と叫びたかったけど、声が出なかった。  このままだと俊が帰ってしまうかもしれないと焦っていた。  開け放ったドアを叩いてみた。  コンコンと音が響く。  母にはわかったみたいだった。 「ちょっと待っててね」  そう言って母が上へあがってきた。 「仁、松下くんよ」  廊下から声をかけてきた。  二週間も閉じこもっていた息子へ、いつものような声でそう言った。  母が廊下に出してある食器を見つけたらしい。  お盆を手にした気配。 「松下君ね、毎日来てくれているの。昨日は相田くんと一緒。一昨日はバンドの仲間みんなと来てくれた」 「・・・・・・」  返事ができない。 「どう? 会ってみる? それとも明日にしてもらう?」  ボクは返事の代りに、ちょっとだけ顔を出した。  母は驚いていた。 「松下君に入ってもらう?」  うん、とうなづいた。 「わかった。今、呼んでくるね」  母の安心した笑顔。  下へ降りて松下に上がるように言うのが聞えた。  ボクは大勢に心配をかけていたと気づいた。  すぐに俊が入ってきた。 「小野ちゃん」  久しぶりに見た俊。  外は連日天気がいいらしい。  以前の記憶よりも日焼けしていた。  まだ声が出ないから、あわててそこら辺のノートを掴んだ。  ペンで書く。 『久しぶり』  俊はそれでボクが話せないことを悟ったらしい。
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