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「ドア、閉めていいか?」
ボクはうん、とうなづいた。
俊は、勝手知ったるなんとかとばかりに、いつもの大きなクッションを手に取り、ボクの向かいに腰を下ろした。
ボクはベッドに腰をかけていた。
これがいつものボクたちの定位置。
ベッドに二人で腰掛けるのは、異性に限る。
それも親しくなりたい異性に、っていうのがボクたちの主張だったから。
今日のボクはもう一つ、滅多に使わないで蹴り散らしているクッションを手にした。
床に置いてその上に胡坐をかく。
「おっ、なんだ? いつもと違うな」
そう俊が言う。
ボクはさらさらと紙に書いた。
『同じ目線でいようと思って。上から目線だとよくないだろう?』
それを読んで俊が吹きだした。
ボクも一緒に笑った。
すぐと、ぐわぁぁぁと体温が上がった。
ああ、生きているんだと実感した。
俊は笑ったままだ。
けど、その目からは涙があふれていた。
ボクも笑う。
そして同じように涙があふれてきた。
昼に散々泣いたのに、まだ涙が出るんだと頭のどこかでそう思う。
涙とは赤血球等のない血液なんだと聞いたことがあった。
それってボクは、大出血しているってことだろうと自分に突っ込みを入れていた。
「よかった。小野ちゃんがいてくれて、本当によかった」
『僕はいつだってここにいたぞ』
ちょっと無理して言おうとしていた。
息とともにかすかな声が出た。
「ちょっと声、出たな」
『うん』
ほんの僅かな声。
「すんげえ風邪をひいた後みたいな声だけどな」
俊がそう言って笑う。
ボクも泣きながら笑った。
「明日、他のみんなを連れてきていいか?」
『うん』
その夜、俊はそのまま夜中まで一緒にいてくれた。
今までのボクは一人になることが安心できた。
けど、今は誰かがそばにいてくれるという安心感を知った。
もう二度と誰かと笑いあえる日が来るとは思ってもみなかったから。
現実を受け止めて泣くだけ泣いたら、周りが見えてきた。
生きることは苦しい。
けど、それをなんとかしてもがきながらでも乗り越えると強くなれるし、新たに見えるものがある。
友達ってありがたい。
そして黙って見守ってくれている両親にも感謝をした。
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