興津 れいり (おきつ れいり)

2/2
前へ
/54ページ
次へ
塗りたくられた、白と黒。 鮮やかな発色に目を痛める。 四角い空間。 それは教室であり舞台。 まだ、誰もいない箱。 白は静かに影を落とし、黒は喧騒として光を続ける。 モノトーンで彩られた教室。 体を横たえる机、 座して主人を待つ椅子、 見えても手は届かない窓の外。 物憂げに、監視をする教卓。 そこで繰り広げられる、社会の模倣。 何と言ったか? おままごと。 答えが分かっているのに、出題と回答の形式に従う。 なぜ? それがこの世界のルールだから。 別に何にもない。 不平も、不満も。 ただ平穏だけ。 それだけでいい。 ここにある、机や椅子のように。 海の底の貝のように。 「出題:興津れいり ジャンル:ノンジャンル  興津れいりにとって、この世界はなにか?」 「―――。」 如何に手を尽くしたところで、 他に答えのない、救いのない解。 まるで数学。 その単語に、 ひとりの顔が浮かぶ。 風が吹く。 胸がざわつく。 その意味は分からない。 答えは怜悧の向こう側。 白が伸びている。 それを追って、黒の席に座る。 今日もまた、 おままごとをしよう。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加