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【10年後の江梨の世界】
そこは異様な世界だった。
父がいた。母もいた。10年後の老いた姿ではあったが…
見たこともない男性がいた。年は30代くらいだろうか。
小さい子どもが二人いた。
そして、間違いなく自分がいる場所は昔の住み慣れた実家である。
私は布団に寝かせられていた。
風邪でも引いたのだろうか。
私の枕元には医者と看護婦がいた。
医者が、両親と見知らぬ男性に向かって言った。
「もう、時間の問題です。
伝えたいことがあれば今のうちに。」
えっ、どういうこと?
私は病人なの。
時間の問題って?
私は咄嗟に10年後の自分の状況を悟った。
意識が朦朧としていく中で、必死に声を振り絞って両親に向かって、
「私の部屋にある虹色の鏡をすぐに持ってきて!」と言った。
すると、傍らにいた見知らぬ男性が立ち上がって私の部屋の方へ行った。
すぐに戻ってきて魔法の鏡を私に渡した。
私は、元に戻ろうとした。
『§¢£$&§』
頭が朦朧としていくなかで、なんとか元に戻る呪文を唱えようとしたが、上手く言えなかった。
次第に薄れいく意識の中にファラオの姿が現れた。
『これがファラオの呪い。
100回を超えて変身した者は、決して元には戻れない』
「十月一日午後三時二十分ご臨終です。」
医師の声が部屋の中に響いた。
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