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カタカタとパソコンを操作するタールは、赤井に関する履歴書を画面に映した。
「ついでに、あの赤井という男は、今でこそ警備員をしているが、前職はそうとう黒い。奴は元指定暴力団組員の男で、傷害と恐喝で一度逮捕されて起訴されたが、裁判目前で不起訴処分になった。で、誰が背後にいたと思う?」
「もしかして、黒埼か?」
それを龍太が聞くと、タールは頷きながら「他の警備員もそうだ」と答える。
「マジかよ…そんな奴等の溜り場だったなんて」
「連中の手口はこうだ。まず、美術品に多額の保険を掛ける。その後、赤井達が美術品を盗んだのだろう。現に改装前にも窃盗事件が起きていて、未だに盗まれた美術品は見付かってない。しかも、保険金は高額だったしな」
「んじゃあ、また連中が?」
「そう言う訳だ。奴等め、芸術を完全にバカにしている。これはキツイお仕置きが必要だな」
「でもよ、証拠がねぇんじゃどうにも…」
そう俺がタールに言うと、彼女は得意気に笑って「それなら既に考えがある」と答えた。
「考え?」
「あぁ。だが少し準備が必要になる。お前達はしばらく仕事を続けろ。後は私が動く」
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