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「何だこれ?」
中に入っていたのは、一振りの刀。
本物かと思ったが、よく見るとそれは模擬刀で、刃は付いてなかった。
「よく出来ているだろう?人は斬れない代わりに、それ以外は殆ど斬れる」
「なにその不殺誓約したどっかのサムライ設定の武器は?」
無駄に凝った造詣に溜め息する俺に、タールは「まだあるぞ?」と言ってゼブラ柄のマフラーを用意する。
「こっちは宇田川用の道具だ。明日にでも渡しておけ」
「お前といいオイルは、ホントに何者なんだ?」
箱に刀を戻してマフラーを押入れに入れながらタールに尋ねるも、彼女は「さぁて…な」と言ってち上がった。
「私やオイルは、あくまでお膳立てが役割だ。正体まで知ったら…それこそ日常には戻れなくなるぞ」
「……」
結局肝心な事は未だに謎のまま判らず終いになり、翌日から事態は大きく動いた。
「越枝、宇田川。黒埼館長がお呼びだ。館長室に来い」
赤井と一緒に館長室へと早朝から出向くと、上機嫌で黒埼は「おはよう」と言った。
「さて、お前達。例の茶堂との打ち合わせはどうなってる?」
「あ、はい。順調です」
「そうかそうか!いやぁ、これで当美術館も今以上に大きくなるというものだ」
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