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どうやらタールの偽サイトで完全に信じ切っている黒埼は「出来れば、本人と直接会えないか?」と尋ねられた。
「え、い、いやぁ…それは難しいですよ?なぁ?」
「そ、そうそう!あの人、籠もってばっかなんですよね。アハハハ…」
「そうか…それなら仕方ない。赤井、2階フロアに展示スペースを確保しておいたか?」
「はい。今月の目玉として、大々的に広告もしておきました」
「そうかそうか!これは楽しみだ!」
何とか誤魔化せた俺達は、その後も仕事を相変わらずこなして休憩時間になると、俺は龍太に昨日の出来事を伝えた。
「…やっぱり、秘密ってか」
「口が堅いって言うより、ありゃ相当腹に一物抱えてるって感じだ」
「つっても、今更辞めれるわけねぇしな」
屋外で煙草を吸う俺の隣でコーヒーを飲む龍太は、手摺に腕を乗せながら「そうだよな」と相槌をうつと、不意に俺に問い掛ける。
「ところでエダ、お前の駄文作業はどうしてんだ?」
「小説の執筆って言ってくれないかな!?」
「わーった、わーった。で、どうなんだ?」
オイルやタールと関わってからは、小説の執筆なんて出来たモンじゃない。
おかげで、ここ数ヶ月は全然書いてない。
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