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俺達が墓地を離れると、ちょうどすれ違いにノーネクタイの長身の男と出くわした。
しかも、その手には顕花用の菊の花束が握られていた。
「ちょっと聞きたいんだが、嵐洋二って人の墓はどこか判るか?」
「知ってるけど…アンタは?」
「質問に質問で返さなくても良いだろ?まぁ、家族友人以外の部外者が墓参りに来るのは変だがよ?」
そう言った男は、上着のポケットから警察手帳を取り出した。
「警視庁捜査一課の吉田啓太だ。3年前のひき逃げ事件を捜査している。因みに現場主義のノンキャリ刑事だ。おっと、趣味は麻雀だからな」
「「ンなのどうでもいい」」
妙に軽い言い方に俺と龍太が揃って突っ込むと、啓太は「こりゃ失礼」と言って洋二の墓前に花を手向けた。
「で?捜査一課のデカさんが、何の用だ?」
「いや何…3年前のひき逃げ事故の話しを聞きたくてね」
「話す事はねぇよ。行くぞエダ」
「あぁ。悪いな、デカさん」
俺と龍太はそう言って今度こそ墓地から立ち去ると、啓太は1人取り残された。
「あ!オイオイ…行っちまいやがった」
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