第2章 名もなき少女

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ジャンヌさんが退室してすぐ、隣の子も目を覚ました。 髪色は思わずうっとりとしてしまうような穏やかな桃色。瞳の色は青というよりはもう少し淡い水色という感じ。 その後、先生が彼女に名前を聞くも彼女も名前を覚えていなかった。 そして彼女もやはり、自分の出生・家族・そしてなぜあの場所にいたかも覚えてなかったようだ。 彼女も私と同じように動揺はしていたがマスターさんがあふれ出る母性で落ち着かせていた。 んー・・・、と呻りながらクリップボードにいろいろなことを書いていく先生を見ながらふとあることが気にかかった。 私が「先生」と呼びかけると彼は「ん?」といって私に振り返る。 「出生・家族がわからない私たちのような人が現れた場合、どういう風に扱われるんでしょう・・?」 私の質問にマスターと先生どちらもビクッと肩を跳ねさせる。 二人は顔を見合わせて「当人に聞いてこられたら仕方ないか・・・」と呟いて先生は話を続ける。 「さっき、ジャンヌが言ったように基本的にオラクル・・・この船団で産まれたヒトは自分のデータの入ったチップを埋め込まれる。そうすることで身元不明になることを防いでいるわけ。 ただ、もちろん例外はあってチップが体内から抜けたりとかチップの故障などで読み取れなくなるケースが極稀にあるんだ。その人の身元が分からない場合は身元がわかるまで施設に預かってもらうのが通例だね。だから君らの場合も親御さんが見つかるまでは施設預かりになるかな・・・」 「「施設・・・」」 私たちは意図したわけではないけど同じ単語を同時に呟いた。 そして二人で顔を見合わせる。そんな彼女の顔は真っ青。そして私の顔からも血の気が引いていくのがわかる。そして私たちはほぼ同時に吐き気に襲われて激しくむせ込む。 「どうしたの二人とも!?」「これは・・・拒絶反応!?」 先生とマスターさんの二人が私たちを抱きしめ、背中をさすってくれる。 幸いというかなんというか私たちの胃の中には何も入ってなかったのでぶちまけることはなかった。本当に良かった・・・ おおよそ20分後ぐらいだろうか私たちは呼吸も普通にできるようになりようやく落ち着きを取り戻した。 先生に渡された白湯を飲み、ベッドに横たわる。 少しすると -----コンコンコン「ただいまー」 ノックの音と共にジャンヌさんが帰ってきた。
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