第2章 名もなき少女

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「あ、もう一人の子も起きたんだ!よかったよかった。」 そういってジャンヌさんはもう一人の少女のほうに歩いて行き 先ほどマスターさんがしたようにしゃがむことで彼女と視線を合わせた。 少女はいきなり現れたジャンヌさんに少しビックリしながらも彼女と目を合わせる。 「綺麗な目だね。うんうん可愛いじゃない。」 そう言って楽しそうな声で彼女に語り掛ける。 先ほど私を緊張させたことを気にしている素振りも感じられる。 「あ、せっかく買ってきたしこれをあげようー」 ジャジャーンという彼女のセルフSEと共に二人のベッドの間にあった小さい机の上に 色とりどりのフルーツの入ったバスケットと飲み物がはいっているであろう缶が置かれる。 「「わぁ・・・」」 私たちは思わず感嘆の声をあげてしまった。 フルーツバスケットから漂う芳醇な果実の香りは先ほどの私たちの不安などを遠くに投げやってそれを感じることだけに集中してしまう。 「ふふっ、思ったよりいい反応でよかったわ。 二人ともほしいもの言ってね?果物なら切るし、飲み物はあげるから。」 ジャンヌさんは私たちの反応が面白かったのか笑顔で私たちを見て言う。 ただ・・・何と言いますか、さっきマスターさんに投げられたナイフを手で回しながら笑顔で言われるのはさすがに怖いです・・・ 「じゃあ私はこれ・・・」 おずおずともう一人の少女は自分の近くにあった缶を指さす。 その缶にはオラクル文字でココアと書いてある。 「ココアね。缶あけるからちょっと待って。 あ、体起こせるかな?」 ジャンヌさんは彼女の体を支えて起こす。 そしてペコっと音を立ててあけたココアの缶を彼女に渡す。 それをおそるおそる飲むと、すごくうれしそうな顔で「おいしいー」と言った。 「そっかそっか、あなたは甘いのが好きなのかな? で、そっちは何かほしいのない?ここにあれば何でもいいわよ?なければ狩ってくるし。」 (-----「かって」のイントネーションが少しおかしかった気がするけど気のせいだよね、うん)「じゃあ私はその赤いので・・・」 私はバスケットの中に入っていた赤い果物を指さす。 本音を言うならどれもが私にとって初めての物だったので好みも何もないのだけど・・・とは言えなかった。 「オーダー―りんごはいりまーす。」 ジャンヌさんは赤い果物をつかむとものすごい勢いでカットしていく。
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