第2章 名もなき少女

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「はい一丁上がり!」 そうしてお皿に盛りつけられたりんご(?)を渡された私はそれを口に運ぶ。 口に広がる甘みと酸味。思わず顔をしかめる。 「あれ?お口に合わなかったかな?無理して食べなくても大丈夫よ?」 マスターさんが心配しながら私のほうにやってきた。 それを私は手で制止する。しばらく咀嚼して取りあえず飲み込む。 「すっぱかっただけです。すごくおいしいですこれ! すっぱいだけじゃなくて甘くてほんとにおいしい。」 ちょっと自分でもこの味をどう表現していいかわかんなくて取りあえず 手で頑張って表現しようとしてわたわたしてみる。 ジャンヌさんは、そんな私を見てブフッと吹き出した。 「美味しかったのはわかったから、落ち着きなさい ククッ・・・まだたくさんあるから、ね?」 それから私たちはジャンヌさんたちがカットしてくれた果物を食べ続け、 おなか一杯になったため、ぼーっとしていた。 するとジャンヌさんが、「あぁ、そうだ」といって手を叩く。 「あなたたちが最初に口にしたものをあなたたちの名前にしましょう! そっちの子が心愛!で、あなたがりんご!どう?」 「そんな安直な名前の付け方して喜ぶわけないでしょう・・・もうちょっと考えなさい」 ジャンヌさんの提案にマスターさんは呆れたように頭を抱えてそう言った。 一方の私たちは再びお互いの顔を見合わせ互いに指をさして「りんご」「心愛」と声には出さずに言って笑っていた。 「なんか気に入ってくれたみたいですけど・・」 「え?」 そんな私のやり取りを見ていたジャンヌさんが心底意外そうな顔で私たちを見る。マスターさんも驚いたように私たちのほうに振り返る。 私たちもジャンヌさんをじーっと見つめる。 「気に入った?」 ジャンヌさんの問いかけに私たちは勢いよく頷く。 もともと名前がないかもしれないという不安があった私からしてみればどんな名前でも付けてもらえれば良かった。 それでも、こんなかわいい名前を付けてもらえたのは非常にうれしかった。 「気に入ってくれたならよかった! 改めて言うわ、私はジャンヌ。あなたたちを拾った張本人でアークスよ。 よろしくね、りんご、心愛。」 「「はい!よろしくお願いします!」」 こうして私たちが目を覚ました初日はこうして終わりを告げるのだった。
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