青と赤に魅せられて

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  「仕方ない、送っていってやる。 あと少しでレポートのチェックが終わるから、それまで待ってろ」 結衣の顔が瞬時に華やいだ。 「ありがとうございますっ」 もう一度頭を下げた結衣は、緩む表情を変えることが出来なかった。 結衣は勝負に勝ったのだ。 やや怒らせてしまったが、望み通り、田渕の車の助手席に座る権利を得た。 殊勝な態度はとっているが、叫びだしたいほどの喜びを心の中で踊らせていた。 頭を下げたことで、手入れを怠らないストレートの黒髪がさらりとカーテンのように顔を隠す。 その内側で、結衣は満面の笑みを浮かべた。 「コーヒー、入れるよ」 田渕は奥まった場所にある小さな給湯スペースで、インスタントコーヒーの蓋を開けた。 並べたマグカップにスプーンで掬った顆粒を落とす。 ひとつには多目に、ひとつには控えめに。 濃いブラックを好む田渕と、アメリカンで甘いコーヒーを好む結衣。 角砂糖とミルクポーションを二個ずつ、コーヒーを控えめに入れたカップに足す。 常時沸かしてあるポットの湯を注ぎ入れれば簡単に出来上がる、いつもの「餌」。 くるくるとスプーンでかき混ぜて、田渕はまだ立ったままの結衣の傍らに寝そべる長机にカップを置いた。
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