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二時限目の授業が終わる頃には、雨風が一段と勢いを増していた。
短い休憩を挟んで、三時限目が始まる。
教室に現れた現国担当の教諭が、三時限目が終わり次第下校になることを告げた。
迷走気味だった台風は、進路を東寄りに変え、直撃に近い様相を呈してきたらしい。
複数の警報が発令されたので、速やかに下校するように、と教諭は言った。
時折強く吹いて来る風が、校舎を軋ませた。
そこかしこからガタガタと悲鳴をあげている。
両親は仕事だから迎えは無理だろう。
こんな中途半端な時間に帰宅するのは稀で、バスの時刻を覚えていない。
今朝の殺到が思い出されて、結衣はにわかに憂鬱になる。
朝はまだ雨が降る前だったが、この雨風の中バスを待てば、否応なしに全身濡れるだろう。
濡れ鼠でバスに詰められる、こんなに不快なことはない。
現国の授業は相変わらずだるい。
こんな四角い箱の中で、数十人が一斉に同じ文字を追い、主人公の感情を推し量ろうとする。
気の合う友人だって意見が別れることがあるのに、こんな大勢で一つの答えを導き出せるものか。
主人公は真っ当な人間、その前提ありきの意見でしかない。
もしかしたら、まるで心に表情を持たない人物かもしれないじゃないか
あらぬ方向に考えを飛ばしながら、結衣はただ、激しく頭を振る校庭の木々を見つめた。
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