第1章

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1話 RPGの世界へようこそ それは2年前の丁度今頃でした。この世界とは対照的に環境破壊の所為で汚れきった空は太陽の光までも濁し、昼間でも雨が降っているかのように暗かった。それはあの時の日本の社会背景を物語っているようでした。    そしてある程度の生活用品しか置かれていないマンションの一室に青年が1人。  彼もまた、社会の歯車から外された犠牲者の1人・・・ 「おっそいな...」    ソファーに座る青年・・・いや俺はどこか落ち着きがなく、忙しなく貧乏ゆすりをしていた。  ピンポーン  呼び鈴の音が部屋全体に響き渡ると、ソファーを勢いよく立ち上がり予め用意していたハンコを手に一目散に玄関にむかった。そしてドアを開けると扉の先にいたのは、全身がステンレスの塊で覆われており、内部は細かいチップでできているロボット。ヒューロボだった。 「お荷物デス。ここにサインをお願いしマス」  サインの代わりにハンコで印をすると、押し方が悪かったのか富の字が半分消え、田永 になった。 「あ、ごめん。もう一回押しなおすわ」 「大丈夫デス。これでも本人と断定できマス」  宅配屋は気にすることなく、段ボールに入った荷物を渡すと「ありがとうございマス」と言って自慢の2足歩行で歩いて去っていった。  俺はこの行動を見ていつも思う。こういうところがヒューロボの弱点だと。会話はできるが、言葉の裏の意味がわからない。今だってそうだ。「もう一回押しなおすわ」の意味には、(もう一回押さしてくれ)という意味も入っていた。けれどその反応はやはりロボっト。 人間の言葉の裏の意味などわかりやしないのだ。  部屋に戻りソファーの近くの机に荷物を置くとそのままソファーに深く腰を掛け手に持っていたハンコをカッターに持ち替えると段ボールを切り裂いた。    中に入っていたのは、ホロメイト・コンタクトレンズ・RPGの説明書の3つだった。当然RPGのソフトはホロメイトに内蔵されているので存在しない。  俺は必然的に取りやすい説明書をその中から抜き取り開けた。正直言って、全て読むのは面倒くさいしまず何より時間が足りない。目次を開け、RPGについてと書いてある大まかなシステム説明だけを読むことにした。  RPGについて ◎ゲーム概要  この世界は人工物はダンジョン以外存在しない。  そんな中で君はどう生きる?
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