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◆◇◆◇◆
ほどなくして辿り着いた事故現場には多くの警察が闊歩し、行く手を阻んでいた。
「もう……これじゃ行けない」
ぽつりと零し、ふと気付く。事故現場は此処だというのに、何処へ行こうというのか。
此処以外、行く宛てなどないというのに。
自身が零した言葉に違和感を抱くも、その意を問い掛ける人は傍に居ない。
少女は小さくかぶりを振り、踵を返した。
あの事故で不可思議な体験を繰り返した所為か、今自分が立っている場所が現実なのか――その認識すらも危うい。
ズキズキと痛みだした素肌の足の裏と、事故の傷痕。その痛みを振り払うように目を閉じて大きく息を吸い込み、目を開けると同時に息を吐き出した。
が、その息は喉の奥で引っかかり、少女は盛大に噎せた。
「な、に、ッげほ、ひっ」
少女の瞳に映ったのは、あの時と同じ――白い"もや"。
今もまた、同じ目線にある瞳らしき丸い物体がぎょろんっと大きく動いては、まるで三日月のようにきゅっと細められた。
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