【白い“もや”】

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 どしゃぶりだった雨は霧雨に変わり、さらさらと地面を濡らし続けていた。  たくさんの管に繋がれた父。  目を覚ました少女はベッドを抜け出し、青白い顔で呼吸器を頼りに命を繋いでいる父の姿を目の当たりにした。  パタ、パタ……と小刻みに水が滴る音が響いている。それは、父の腕に刺さった点滴なのか、それとも小さな雨粒が溜まりに溜まって窓を打っているのか。どちらかなのか、どちらでもないのか。  呆然と父を見つめる少女にそれを確認する気力は、少しも残ってはいなかった。 「……パパ……」  そっと呼びかけてみても、反応はない。  いつものように頼りがいのある背中に飛びつき、その大きな手で頭を撫でて欲しいのに……今の父は指1本動かすことすら出来ない。  何より、透明なガラスがふたりを隔てている。  お前のような娘が近寄るなど、誰が許すものか――冷たいそれがそう言っているようで、少女は足元から震えを感じた。  ぶるりと震える身体を両腕で抱き、自身を見下ろす。  お気に入りだった真っ白のワンピースは簡素は病衣に変わっているし、そこから伸びた脚には包帯やテープ等で手当てをされた痕がある。  びしょぬれになって父のことばかり気にかけていたせいで、怪我をしていたことなど気付きもしなかった。自覚した途端にひりひりと痛みを訴えかけてくる傷に涙が出てきた。
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