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伊田はサークル内でも浮いた存在だった。20人を超える我がテニスサークルでは、その中でもさらにいくつかの仲良しグループに分かれている。
伊田はそのどのグループからもはじき出されていて、いつも独り言をブツブツと呟く、キモチワルイやつだ。
あいつが犯罪を犯したら、きっとサークルメンバー全員が「いつかやると思っていました」と答えるような人間だ。
「分かった。あいつのことは俺がなんとかしてやる」
決意の宿った瞳で、俺は星歌を見つめる。目が合う。彼女の潤んだ瞳が見つめ返してくる。
「頼っても良いの?」
「もちろん。俺はお前の彼氏だぜ」
「……うん。ありがとう」
星歌は安心した表情を浮かべ、幸せそうな吐息を漏らす。彼女の心が、俺に寄りかかってくるのを感じた。
俺はそれを抱きとめる。彼女が自分を頼ってくれることに対する嬉しさと、それに絡みつくような罪悪感。
100%の愛情を伴っていない自分の発言が、俺の首を絞める。
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