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「あれほど言っただろう! バレないようにしろってよ!」
伊田の胸ぐらを掴んで立たせる。ヨレヨレのロングTシャツはみすぼらしいこいつにぴったりで、俺はそれを思いっきり引っ張った。
伊田のストーカー行為がばれて、伊田と俺が共犯であると発覚したら。そのとき、星歌は自分を騙し、裏切った俺のことを決して許しはしないだろう。それは嫌だ。星歌と別れたくはない。
記録を残さないように伊田の名前を「連絡先」に登録せず、面倒だけどLINEじゃなくて電話で連絡を取り合っているというのに。そういった努力が無駄になるのも嫌だった。
もう長い付き合いで、愛情というものが薄れた今でも、いや今だからこそ、執着という情念が俺を動かしている。
「とにかく」
手を放す。伊田は重力に従って床に崩れ落ちる。
「しばらくはストーカー行為を控えろ。そんでほとぼりが冷めたと俺が判断したら再開するんだ。試験勉強が忙しいという理由で会うのをしばらくやめる。そうすりゃあ説明書を見なくてもしばらくやっていけるだろう」
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