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「うわぁ! これすっごい美味しそう!」
さきほどまでの不機嫌が嘘だったかのように、星歌は満面の笑みを浮かべていた。
洒落た正方形のテーブル。彼女の前には、『borne』の新作のチーズケーキがある。しっとりとしたケーキの生地の上に、ココナッツが散らばっていた。星歌はそれを、これ以上ないくらいに幸せそうな顔で口に運ぶ。
「ん! ほいひい!」
「それなら良かった」
本当に良かったと思う。予定としては最初にカラオケかボウリングに行くことになっていたけど、先にここへ来て良かった。
あのままカラオケに行っても、星歌は1曲も歌ってくれなかっただろうし、ボウリングに行ってもストライク後のハイタッチをかわしてくれなかっただろう。
俺も自分のチョコレートケーキをフォークで1口分切り取る。口の中に入れると、ほどよい甘みが広がった。
「それでねー、最近美佳に彼氏ができたらしくてね……」
チーズケーキの魔法。ケーキを食べたり、他愛もない話をしたり、星歌の口はよく動く。オチもひねりもない話なのに、彼女はすごく楽しそうで、時折心底おかしそうに笑うのだ。
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