空井星歌取扱説明書

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「あ、そうだ!」  俺が星歌の話を聞き流しながらテキトーに相槌を打っていると、彼女が何かを思い出したかのようにバッグからスマホを取り出し、カメラの部分をケーキに向ける。 「半分くらい食べちゃったけど、まぁ良いよね」  そう言ってケーキの写真を撮り始める。たぶん、後でTwitterか何かに上げるのだろう。  一番美味しそうに見える角度を探してスマホやケーキの乗った皿を忙しなく動かしている。 「ケーキと一緒に撮ってやるよ」  そう言うと、星歌は「ありがとう!」と言って、俺に満面の笑みを向けた。  ピースサイン、目線、角度。自分がどうやったら最高に可愛く映るのかという被写体の意識を、俺のスマホで逃がさないようにパシャリと撮った。  写真をLINEで送って、俺はホットコーヒーを飲みながら星歌がスマホをイジっているのを眺める。  たぶん、ネットに画像をアップしているのだろう。指が文字を打っているときの動きをしていた。
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