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「美味い…」
これはもう、ベレンの老舗のナタと比べても遜色ない味に違いない。
卯藤がこの街でずっと努力を重ねて来た証だ。全く、大した奴だと思う。
ベンチの目の前からは古ぼけた家々の屋根が見える。
あの向こうにはテージョ河が広がっているだろうか?
卯藤の店は夏の繁忙期以外は日曜休みだと言っていたから…
日曜になったら、また二人でリスボンの街を歩こう。
まだ行ったことのない場所…夏がはじまる頃には、一緒にジャカランダの花も見に行こう。
あるいは、かつて一緒に歩いた場所も…
そして、二人の記憶の欠片を一つずつ拾い集めて、アズレージョで飾るように繋ぎ合わせていけば…
きっと、美しい絵が描けるだろう。
完
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