858人が本棚に入れています
本棚に追加
「片岡さん」
名前を呼ばれて我に返って振り向くと、ここで待ち合わせの約束をした人物が立っていた。黒髪で髭が濃く、背は余り高くない。いかにもラテン系の男の顔だが口調は穏やかだ。
「やあ、どうも…すみません。こんなところへお呼びだてしてしまって」
片岡、と呼ばれた男は流暢なポルトガル語で一言詫びると、手元にあったカップの中身を一口飲んで、食べかけていた菓子の残りを頬張った。
「奥のテーブルへ行きましょうか。
あなたもナタを如何です?俺もあと一つ二つ追加しなきゃ」
「頂きます。この店のナタを嫌いなリスボンっ子なんていませんよ」
最初のコメントを投稿しよう!