第1章

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 片岡誓(せい)の両親は共に日本人だったが、商社に勤めていた父の赴任で幼い頃から十年ほどリオデジャネイロで暮らしていた。ポルトガル語を話せるのはそのためだ。  彼の母は、彼が4歳の時…父の赴任の直前に突然倒れてそのまま亡くなった。父と子はその後リオからニューヨークへ移り、片岡は高校を経てコロンビア大学へ進んだ。  初めて起業したのはまだ大学生の時だったが、その後立ち上げた会社を売却しては一旦企業に勤めてみたり、そしてまた起業したりしながら、三十五歳になる現在まで比較的順調に人生を歩んできた。 「なかなか華やかな経歴でいらっしゃいますね…だが、ずっとIT事業に携わってこられたあなたが、何故突然ホテル経営の道へ?」 「突然というわけでもないですよ。ここ二年ほどはフランスの企業でヘリテージホテルをリノベーションするプロジェクトに関わってきました。何だろう、ITの世界は移り変わりが激しいし…以前はそれが楽しくて仕方なかったんですがね…俺も歳を取ったかな」
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