第1章

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 そんな軽口とは裏腹に、片岡誓自身は日本人にしては長身でスタイルが良く、顔立ちもはっきりして溌剌とした印象を与えていた。 「いや、とんでもない…それにしても大型のシティホテルよりも、古い建築物を利用するブティックホテルに興味がおありですか」  この日片岡が待ち合わせたのはリスボンの不動産会社の社員だった。二ヶ月ほど前にホテル改装に向いた物件を探すよう依頼していたが、やっと返答があり、詳細を調査するためにリスボンへ来た。  そしてまず話を聞くためにこの菓子店を待ち合わせ場所に指定したのだ。 「大型ホテルには余り興味ないですね。先日も仕事でブリュッセルに行って中央駅前の大手資本のホテルに泊まったんですが…まあホテル自体は悪くなかったが個性がなくて。それに今はエコと言えば何でも許されると思ってるんですかね?あのアメニティはお粗末だったな…おっと申し訳ない。ホテルの話になるとつい長くなる」  菓子店の店頭は小さくすぐに人があふれてしまうが、奥のテーブル席は外観に反して広かった。夕刻にさしかかってきたせいか人もまばらで、スーツ姿の男が二人で話し込んでいても余り違和感がなかった。
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