第1章

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ガタンゴトン… ガタンゴトン… 人は人生でどれぐらいの時間を自分の為に使っていないんだろう。 毎日仕事をしては会社にこき使われ、残業も当たり前にする。お金のためだから仕方がないと皆んなは言う。もちろん俺もだ。 仕事が終わり21時31分。同僚達も仕事を済ませるとそそくさと帰ってしまった。 今は電車の中。それほど混んではいないが冬なのに少し蒸し暑かった。 残業のせいで夕食も取っていない。 (今日は途中で降りてみるか。) 家から仕事先までは電車で40分。徒歩も入れると往復で1時間程度だ。 俺は夕食を取るために4つめの駅で下車した。初めて降りた場所だ。 スマートフォンのアプリを使って周辺の飲食店を探してみる。 時間は22時を超えてしまっていた。大抵の飲食店は閉まっていたがファミリーレストランなどは空いていた。 (ここまできてファミレスはなぁ…) アプリの検索を飲食店から居酒屋に変える。やはりこの時間だと居酒屋あたりが妥当だなという結論に至った。 (居酒屋でビールでも飲むか。) 幸い、明日は仕事が休みだった。帰りが少し遅くなってもそれほど支障はなかった。 アプリの検索を続けていると妙な居酒屋を見つけた。 名前は「居酒屋。」そのままの名前だ。しかもレビューは無く、今日出来たばかりの新しいお店だった。 しかし、俺は不思議に思った。 (今日オープンのはずなのに何でこんなに古臭いんだ…?) 「居酒屋。」の紹介写真では店内の様子も映っていた。見た目はとても今日オープンしたお店ではなく50年以上も前に造られたような所だった。
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