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「やあやあ! 私のあまりの威厳さに言葉を失っているようだな! 私は貴様らに作られたジャック・オー・ランタン、その名を『パンプキン』と言う!」
「は? 作った覚え無ぇけど」
「もしかしてあれじゃないっ? 今日の放課後の!」
声を弾ませる友也に視線が集まる。そこでようやく思い出した。放課後の教室で、敦己・友也・ケイでハロウィンパーティーをやる計画があったことを。しかし友也が持ってきたある物にケイが顔を描いてジャック・オー・ランタンを作ったところで、あっさり教頭に見つかり帰宅させられたのだ。
『下校時刻だ! 早く帰りなさい!』
『やっべ、教頭が来た』
『教頭"先生"だろ!』
『はあい! 教頭"先生"、ごめんなさい(はあと)』
そうやって最後にペロリと舌を出した友也の姿が思い出される。そして今。確かにあの時作ったジャック・オー・ランタンが腕を組んでふんぞり返っていた。
「そういや作ったな」
「でも私の記憶が正しければアレって……」
「うん、柿で作ったね」
神妙な面持ちで言葉を被せてきた友也。かぼちゃが重たかったから……と、通学路の柿の木から拝借してきたのを思い出す。
「なのに『パンプキン』て……。なんかごめんね。僕が柿なんか持ってきたばっかりに……」
「うるせええええ!! お前らのせいで私は!! こんなちんまりしたサイズになってしまったんだ!! せめて名前くらいパンプキン名乗ったって良いだろうがクソがッッ!!」
「お、おう」
なんとも言えない空気が流れる中、いまだ眠り続ける姫野の寝息だけが響き渡る。
「おっと取り乱してしまったな。それでは本題に入ろう! こんな身体だが貴様らが与えてくれた事に変わりはない! ということで貴様等を特別にもてなしてやる事にした!」
「いやいいよ。家に帰せよ」
「シャラアアァップ! 貴様ら、今が何時か知っているか!? そう、ちょうど〇時をまわった所だ! つまり今この瞬間、ハロウィン当日になったのだ!」
「帰りてぇ」
もはや溜息しか出ない敦己。周りの二人は特に同調する事も無いが、眠たげに瞳をこする辺りに同意の心が感じられる。
「まずはフィールド作りと行こう。"パンプキンビーム"!」
ジャック……もといパンプキンがそう叫んだと同時。静けさに包まれていた校舎がグニャリと歪んだ。波打つように揺れる廊下、壁、天井。立つことすらもままならない。
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