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「ちょっと何よこれ!」
「どわあああ! 酔う! 酔う!」
「ねえ見てアッくん。姫野さんまだ寝てる……」
まともに会話をする余裕も無く各々狼狽すること数十秒。異変に気付いたのはケイだった。
「ねえ! なんか縮んでない!?」
「なにが!?」
「学校がよ!」
足元ばかり見ていた敦己と友也が顔を上げ、青ざめる。壁や天井がみるみる迫り、まるで彼等が巨人化しているような感覚に陥った。最終的に一番背の高い敦己が少し猫背になる程度まで天井が下がり、腕を広げると両手の指先が左右の壁に当たってしまうほどの横幅となる。身動きしにくい事この上なかった。
「さあ貴様等! フィールドは整った! 宝探しを始めよう!」
「ちょ、これ狭い! ツライ!」
「この一階のどこかの教室に宝部屋がある! 頑張って探してくれ! ちなみにそれ以外の教室では貴様等を楽しませる仕掛けを用意しておいた!」
「いやいやいや! そんなことよりなんで学校縮めた!?」
「縮めてません~。私のサイズに合わせただけですぅ~。貴様らの大好きな柿サイズですぅ~」
「こいつ根に持ってやがる」
「ちなみに宝部屋見つけるまではこの空間から出しませ~ん」
「はあ!? クッソ腹立つんだけどこのクソ柿!!」
敦己の怒声を鼻で笑い飛ばし、パンプキンはマントを翻しながら空中に消え失せる。残されたのは三人と姫野。癪だが言う通りにするしかないと悟った三人は互いに顔を見合わせるが、一つ問題があった。
体育の時間しか起きないという伝説を持つ姫野。彼女はいまだ眠り続けている。
────────
「で、こうなったわけか」
「仕方ないでしょ。狭くて背負えないし」
「あはっ。姫野さん本当起きないね~」
友也がガラガラと押す台車。その上に寝かせられた姫野がいびきをかいて眠りこけている。
それから閉塞感のある廊下をなんとか進み、一番最初に現れたのは家庭科室だ。近付くと扉の隙間から淡い光が漏れているが、何が起こるか予測不能なこの空間。ドアを開けたくないというそれぞれの主張によりジャンケン大会が繰り広げられ、瞬殺された敦己が渋々中を覗く。
そこに居たのはパンプキンと変わらぬサイズの小さな人間が一人。ブロンドの髪を靡かせるイケメンが、かっぽう着に身を包んで座っていた。テーブルの上にはレアチーズタルト。フォークをかまえたブロンド男が妖艶な笑みを浮かべる。
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